人はいつも、何かを計画している時がいちばんときめく。
どこへ行こうかと考えている時。
どうやって行こうかと迷っている時。
まだ見ぬ景色を思い浮かべている時。
そんな時間こそが、いちばん自由な時間だと思う。
それが未だ見ぬ旅の風景であれば、なおさらだ。
旅は出発した時に始まるのではない。
行き先を探し始めた、その時からもう始まっている。
出発してしまえば、あとは終わりに向かって進んでいく。
だから私は、旅の算段をしている時間が好きだ。
行き先を決めるまでに迷い、
決めてからもまた迷う。
電車で行くか、車で行くか。
遠回りして景色を取るか、楽な道を選ぶか。
酒が旨い宿にするか、景色のいい宿にするか。
そんなことを、いつまでも考えている。
そして算段をしていると、
たいてい話は横道にそれる。
宿を探していたはずなのに、
気がつけば酒の話になっていたりする。
どの列車に乗るかを考えていたのに、
昔の旅を思い出したりする。
行き先を決めているだけのはずなのに、
なぜか人生の話になってしまうこともある。
そんな算段と余談ばかりを、
ゆっくり書いていこうと思っている。
このブログは、旅の記録を書く場所ではない。
どこへ行ったかではなく、
どこへ行こうかと考えている時間を書く。
迷ったことも、寄り道したことも、
決めきれなかったことも、そのまま書いていく。
だから私は、今晩もまた旅を企てる。
地図を眺め、
宿を探し、
行き先を決めきれないまま、
取り留めのないことを考えている。
そして、その取り留めもない
今晩の旅のような時間を楽しみながら、
少し酒を飲む。
これまでに思い描いた旅の算段が、
いくつあったのかは分からない。
そのひとつひとつに、
行きたい場所があり、
見たい景色があり、
飲みたい酒があった。
残りの人生の中で、
そのうちどれだけを本当に遂行できるのか。
それを考えることさえ、
またひとつの旅の算段なのだと思っている。
出発しなくてもいい。
どこへも行かなくてもいい。
そんな夜がいちばん贅沢だと、
最近は思っている。
この場所は、
そんな時間を味わうための記録である。
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第一話 今晩もまた旅を企てる